『無尽蔵』
朝晩が涼しくなり秋の気配が感じられるようになりました。
景福寺の境内にも赤い彼岸花がたくさん咲いております。
さて、景福寺では本堂の床の間に所蔵のお軸を掲げております。
今回のお軸は、
『無尽蔵』
広く尽きることのない徳を包含する蔵、仏の教えをあらわす言葉です。
中国の詩人、蘇東坡(そとうば)は心の安らぎを
「無一物中無尽蔵(むいちもつちゅうむじんぞう)
花有り月有り楼台有り(はなありつきありろうだいあり)」
と詠まれました。
人は何もとらわれがなくなったとき、すべてがありのままに輝く和合の世界であったことに気づける。
私たちは生きていくなかで、物やお金、あるいは社会的地位など、さまざまなものを手に入れ、それを自分のものだと認識します。そうなると、つい、手に入れたものは失いたくないという思いが湧いてくるものです。
しかし、失うことへの不安が、私たちの心に余計な苦しみを生んではいないでしょうか。
本来無一物。私たちは生まれた時は、何も持っていなかったのです。手にしたものに執着せず、捨て去ってしまう。
そうすることで無駄な心配事はなくなり、心に余裕が生まれます。「放てば手に満てり」心の余裕は、あらゆるものを受け入れる寛容性をもたらし、暮らしをより穏やかなものにしてくれるでしょう。
筆者 伊藤道海禅師[1874~1940](無辺光照禅師)
新潟出身。大本山總持寺独住第九世貫首、昭和十年曹洞宗管長。昭和十五年示寂。世寿六十七歳。
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